12.25.2012

朝霧クリスマスデイ


冬朝霧K塾

2012年12月23-24日
member 川地塾 OB 十数人 伊藤フミヒロ記
風待ち

川地塾長出る


23日日曜日 天気 曇り
 予報はずれで雲が低い。川地塾のトレーニングクラスに混ぜてもらう。トップレーサーがたくさん。スカイ朝霧ショップでミーティング。GPSでルートを作って地上練習。古いガーミンだが一応使えそう。ナビ表示と地図表示画面の切り替えは手動かと思ったが、フィールド設定で地図画面に矢印が入ることに気がついた。というか新型を二つ持っているのがいちばんみたいだ。
 午後からガスが上がってきたので2本飛ぶ。前山でのショートフライト。40分と6分。あれこれ練習にはなる。朝霧ロッジでアサノくんと同宿。はぶさんと塾長が後見みたい。行方知れずのはぶさんはバリでエリア開拓中とネットで知る。。

月曜日午前中

完全装備あずまさん

南尾根で上げなおして青線で帰還。
902番目のフライト。100分。総計426h54m。
2012年のトータルちょうど54時間。1本平均52分


24日月曜日 天気 曇りから晴れ、雪
 午前中は北東風強く出られない。上のテイクオフから出た3機が韓国のメーカーパイロットのようだ。プロだから上手。午後、落ち着いてきたところで塾長がテイクオフ。いっきに主稜線につけてぐんぐん上げる。あきらめず下山しなかったヒトが続々とテイクオフ。
 予定のタスクを回るが、gpsはバッテリー切れ、寒さにもめげて途中下車。100分ほどのフライト。カメラも予備のgpsも取り出す気分にならなかった。3000mまで上がる日だったが相変わらず上げきらずに移動しているのはいかがなものか。さらに高く上げるのなら防寒対策も再考したい。
 雪が舞ってきて3時解散。十里木峠は雪で渋滞なので速攻Uターンして沼津に下って帰京。
 河口湖メンバーのなべちゃん新機体パッションで現われる。同じく売り出し中の長尾さんはやまちゃんと芝川域の桜峠まで行ったようだ。すごい。
この日の動画。S崎さんの素晴らしい動画。高い!
 http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=Syio42ZV1E4



十里木雪模様

12.18.2012

神楽ガ峰スキー


神楽ガ峰

2012年12月16-17日
member 羽根田オサム 伊藤フミヒロ記


初日北風茫々


2日目、南暖風

16日日曜日 天気 曇り
 6時半に東松山で合流。関越トンネルを抜けると雨。満車のみつまた駐車場へ。土日祭日は有料500円に復活したらしい。高橋マネ補佐にあいさつして上がる。山は猛烈な北風で吹雪、なんで田代ゲレンデへツアーする。和田小屋1泊、10人ほど。
スキーヤーはめったに登らない神楽峰山頂
はねやん

和田小屋

17日月曜日 天気 晴れのちくもり
 朝食7時で8時から整地ゲレンデを滑る。快晴、昨日と真逆、南風で暖かい。谷川岳や平標に南から雲がどんどん進入している。9時からスタート。神楽ガ峰2029mまで上天気の中のんびり行く。ほかにボーダー2名とスキーヤー2名だけ。10時半、山頂はだれもいない。苗場山はもちろん妙高、白馬までよく見える。素手でも平気な暖かさ。
 田代側、カッサダムに向かって下る。雪がよければツリーランが楽しめるボウルと沢。雲が下がってきたが雨にはならない。のんびり下ってゲレンデに出る。12時。リフト1本で上り返してスキー場トップ。春のような陽気と雪質だった。
 和田小屋で休んで下る。二居の宿場の湯600円に寄って月夜野から小雨の関越道を帰京。
左から、八海山、越後駒、中岳、右手前の巨峰が割引と巻機

こっち側を下るのは初めて

12.15.2012

朝霧冬パラ2


2012年12月14日
member 太郎 伊藤フミヒロ記

うっすらと逆転層。スカイ朝霧提供

14日金曜日 天気 晴れ
 6時に東京出。大井松田で降りて富士山南回りで朝霧へ。十里木前後で事故車があちこち。積雪はないが霜が降りて道が凍結している。
 朝霧猪の頭エリア。全部で20機くらいか。木島平、遠見など雪国のスクールが来ている。日照がでてきて11時にテイクオフ。穏やかな上昇で、逆転層があるよう。稜線ぎりぎりで天子岳まで。ウイングキッスから出たトレーニングクラス?数機についていく。帰路は稜線に戻れずダイレクトルートでLD。2時間近くのフライト。時間があるのでもう1本ショートフライト。
 風の湯に寄って中島牧場でストーブを燃やす。流れ星が見える夜だったが雲が張ってきた。翌朝は雨。のんびり帰京。ウエアやあれこれがストーブの煙くさい。
898番目のフライト。総計424時間28分。今年は(3月16日から)50時間越えた。2005年以来の記録

12.09.2012

三ツ峠クライミング


三ツ峠と西湖根場

2012年12月7-19日
member 太郎、YU Kei 伊藤フミヒロ記
50年近く前のこと

7日金曜日 天気 晴れ
 6時に東京出。東名から篭坂峠越えて三ツ峠入口へ。笹子トンネルの事故で御坂道は混雑かと思ったが普通だった。登山口あたりはマイナス5度くらい。10時に歩き出すがだんだん雪道になってくる。つるつる道を三つ峠山へ。快晴無風の山頂からは全方向がよく見える。クライマーは見当たらず、ハイカーが三々五々。三つ峠山荘先のトレーニング岩場でかんたんクライミング。雪もなく穏やか。

 パラグライダーの緊急用ロープを試す。ファイントラックのもので海用。ダイニーマ芯の軽量6ミリロープ。この細ロープと小型エイト環とで、木にぶら下がったとき本当に下れるか実地試験する。丈夫なのは間違いないが、スタティックロープでまったく伸びない。シングルとダブルで試すが、アクリル被覆だけがずるずる伸びて溜まってくるので長い下降は難しいかもしれない。30mロープをダブル使用するくらいが妥当だろう。

 雪道を滑りながら下山。面白い。天下茶屋でお茶して太宰治の部屋を見る。渋い。4時足和田ホテルイン。太郎が風をひいたみたいなんでつきあって車泊。寝るだけならホテルも車も変わり無し。
ロッククライミング使用禁止のダイニーマロープで懸垂

南面はぽかぽか

8日土曜日 天気晴れ
 前線通過で突風が吹き荒れる。太郎が持ち直したようなので西湖畔の西湖(ニシノミ)集落へ。足和田災害慰霊碑のあたりから細道を上がるが以前アイスクライミングに来たとき見た萱葺き家を見つけることはできなかった。あれは被災を免れた数軒のひとつだったのではないだろうか。

 西湖畔根場へ。再生された萱葺き民家が並ぶ観光施設いやしの里350円。資料館で足和田災害を学習する。西湖集落の移住先は西湖南の樹海民宿村と聞いていたが、根場集落は?疑問に思っていたのだが、すぐ向かいに越したとのことで納得。たしかに対岸のバス道脇が民宿村となっているようだ。最悪の被害をこうむった根場集落は生存者全員が村を離れ向かいの樹海の中に居を移したのだった。いやしの里は捨てられた村跡の土石流の上に作られている。


 この旧足和田村根場集落跡を富士河口湖町がそっくり買い上げて新しい萱葺き民家群に変えたのは数年前。各戸ごとテナント方式で商売の人に貸し出している、ということも現地で聞き取った。いまや大駐車場が作られ観光バスが出入りするにぎやかな名所になっている。

 根場を後に南下、精進の諏訪神社と有名な大杉を見にいく。精進の大杉は樹齢1200年、目通り10m余。いつ見ても感動の神木である。中道往還沿いの精進は古い宿場だが、近くの樹海にある精進湖民宿村というのは? これは足和田根場の災難を教訓に精進の人が率先して移住したものだという。精進大杉の脇には旧小学校があり校庭がある。精進集落は過疎とはいえまだ生きていて、宿場の面影を残した民家が並んでいる。

 時間があるので中島牧場へ寄る。朝霧一帯は南風強風でパラグライダーは1機も飛んでいなかった。ミルクランドで天気予報をチェックすると明日も荒天らしい。もう1泊の予定を変えて富士から新東名で帰京。


根場いやしの里。園地だけど空いている日なら悪くない

正面に富士山を望む立地。美しい村だったそう
参考 
 十二が岳の岩場へのアプローチにある桑留尾川沿い(いずみの湯あたりのキャンプ場)は西湖集落側に属するようでここでの被災は少なかったよう。子どもたちの旧通学路の案内標識があるが、近隣には河口湖長浜の西浜小学校と旧根場分校があったからそれらへ続く山道だったようだ。

12.03.2012

朝霧と河口湖冬パラ1


朝霧と河口湖

2012年11月30-12月2日
member 太郎、伊藤フミヒロ記




30日金曜日 天気 くもり
 太郎とのんびり出かける。予報よりも雲が多い。昼に朝霧猪の頭。明日のJレースの調整のヒトが数人。2本飛ぶが前山の移動だけ。20分と50分。中島牧場で旅の青年と焚き火。
1日土曜日 天気晴れ
 猪の頭に様子を見にいく。西風が吹き降ろしていてJレースはキャンセルらしい。天子エリアも同じらしいので田貫湖で太郎と散歩、風がすごいんで早々に退散して風の湯で和む。中島牧場でストーブ燃やす。


2日日曜日 晴れくもり
 夜中の北風が収まり朝焼け富士に海風が入り込んでいる。河口湖大石へ移動。だんだん雲が張ってくる。いつもメンバー11人で上がる。いちばん宮本機が出て上がって行くが、ほかはショートフライト。降りるだけのつもりで島袋機の後に出ると、そこそこ上がる気配。背の山稜線に届いた島袋機の挙動が怪しく一目散にランディングへ向かうのがヘン。庄司機が高いところを動いているのでそれならとあちこち動いて降りる。1時間3分のフライト。
 曇っているのにテイクオフ前あたりでも上がったり下がったりが激しかったから、南の風と西の風とでグチャグチャしていたのではないかと想像します。気温は零下のはず。
 笹子トンネルが一部崩落して通行止めだそう。石割の湯に寄って雪の舞う道志道を帰京。

 太郎の動画ございます。



11.24.2012

北ア立山スキー


立山スキー

2012年11月21-23日
member 北田、寺本、古川、竹田、川崎、高城、ダイラ、伊藤フミヒロ記

山崎カールとなり

the rider


21日水曜日 天気 晴れ
 タイヤ交換が間に合わず、黒部温泉薬師湯からタクシー4500円で上がる。予定どおり朝8時、扇沢で全員集合。0830始発で10時には室堂。快晴絶好日。ひと滑りしながら雷鳥荘イン。積雪豊富で上出来のコンディション。
 昼から称名川左岸を滑って(いきなり雪庇なだれ)山崎カール方面を目ざす。山崎さんちのとなりのカール2750mから滑降。ノントラックの浅いパウダーで超快適。
 BCガイドの研修会とやらで有名人がたくさん。ピークス取材班も大人数で取材に入っていた。
血の池ボウル

スネーク上

カール下


上天気を呼んだヒト

22日木曜日 晴れ-くもり
 快晴。8時前スタート。称名川左岸を滑る。新ラインはグッドモーニングスティープ。雷鳥沢側に上がり、ヘブンバレーの頭へ。11時。移動中に雲が張ってきた。小雪が舞う中、風にたたかれた沢底を下る。急斜面で凹凸が見えないので苦労する。このまま吹雪になるように見えたが、午後に一時晴れ間がのぞく。

23日金曜日 くもり雪
 山は見えない。雪が舞う。9時前にスタート。室堂平へ移動するが日照なくモチ消沈で下山。連休初日とあって富山、長野の両側から続々とヒトが入ってきた。ときどき知人とあいさつ交わしながらアルペンルートを下る。お昼、薬師湯でのんびりして解散。大町サンラクに寄って帰京6時過ぎ。
 けっこうな初滑りでした。いつものこと内輪にもみなさまにも感謝申し上げます。


シエムたけちゃん
チンフル一也

11.19.2012

滝知山と三筋山


伊豆滝知山と三筋山
2012年111月16-18日
member さのさ、ほか、 伊藤フミヒロ




三筋山から相模灘

16日金曜日 はれ
 函南のイクスでさのさと待ち合わせ。11時前に滝知山に上がって様子を見る。第1陣は5~6人が出てみんなショートフライト。様子を見てでる。昼をはさんで2時間ほど玄岳までいったりきたり。だんだん西風強風になってトップランの練習をするが降りられず笑われる。島の校長にコツを教わるがまた次回。海岸線を河津へ。踊り子会館1000円風呂。下田港で回転すし。
伊豆スカイラインと熱海

17日土曜日 雨  
 東伊豆パラグライダーフェスティバル。初日。河口湖チーム10人ほどと合流。開会式と同時に雨。午前中は体育館でゲーム、温泉、いつもの民宿勝丸でのんびり。夜はウエルカムパーテヒでにぎやか。早寝。
三筋高原から利島

トップ二人を表彰する村越隊長

18日日曜日 くもりはれ
 三筋山でファンレース。60人ほど集まる。雲の多い空でいまいち。1本勝負だったが、テイクオフで手綱右左まちがえること2回。余裕のランディングのはずがアウトサイド、でいいことなかった。昼過ぎの2本目はフリーフライトで好条件でまずまず。サンパラ出の浜名湖チーム松本朝香さんがエレメントで優勝したのに驚いた。2位はマントラの常勝女子チャンプの中目さん。4時解散帰京。
 伊豆スカイライン、冷え川まで買い、山伏峠から、で熱海峠料金所、はがらがらだったが箱根峠から箱根新道大渋滞、小田厚が事故で西湘バイパスへ、西大磯から1号線、抜け道ではまり、今シーズン1番の渋滞被害。5時間半かかった。伊豆箱根は要注意だね。


11.12.2012

西湖と広沢寺


西湖と広沢寺岩場
2012年11月10-11日
ぼろぼろの右岩峰

アプローチルートはボルト貧弱

10日土曜日
 朝いちで朝霧パラエリアへ。河口湖メンバーもきてにぎやか。北風茫々で昼過ぎまで待つが、結局あきらめて解散。3時前に西湖キャンプ場の奥からスタート。岩場は山岳会系でにぎやか。あてにしていた古い残置ロープが取り外されていたので何もできなかった。右の崩壊中のピラミッドピークにもロープが延びていた。アルパインクライミングだね。それにしてもいちばん右のアプローチルートにボルトを打っておくべきだった、といまになって思う。
宮本さんに誘われていたパラ仲間の宴会に移動。河口湖畔のやまとやに古い顔が集まった。上等なお酒をいただく。
岩場から

11日日曜日
 朝から曇り空で早々に解散。厚木ICで降りて広沢寺へ。山岳会系とスクール系でにぎやか。保科さんに合う。2本登って雨がやってきそうなので退散。ズントバーのラーメンと思ったが大行列をみて退散。すぐ雨になった。
週末の広沢寺は近づかないほうがいいかも


11.09.2012

大室山南峰と溶岩湖


大室山南峰と野尻草原
2012年11月1日

2日金曜日
 member Taro ItoFumihiro




野尻草原のトラック
ブナ森で遊ぶ太郎


 富士山の寄生火山(側火山とも言われる)としては2番目に大きいのが北西山麓にもっこりと盛り上がる大室山。もちろん富士最大の寄生火山は南東面に大きく口を開ける宝永山だ。宝永山は江戸時代の1707年(宝永4年)に誕生した最新の火山である。一方大室山の誕生、つまり噴火と成形は紀元前1200年前後とされているから、ふたつの山の誕生には3000年ほどの開きがある。地球史的にはわずかな差だが、現在見ることのできるふたつの山の表情は大きく異なる。片や火山砂礫に覆われた禿山、もうひとつはブナの美林に包まれた緑の山である(どちらも国立公園の特別保護地区に指定されている)。
 
 宝永山にはハイキング道が縦横しているので訪れる人は多い。大室山山麓には有名な富士風穴があり山腹のブナの美林には自然観察路が伸びているが、山頂に至るはっきりした登山道はない。山仕事の人や好事家のつけた薄いトレイルを辿ることになる。大室山山頂はブッシュに囲まれていて展望がないという評判なので訪れる人は少ない。
 
 大室山の最高地点は1468mで、たしかにアセビの森に囲まれていて薄暗い雰囲気。ところが南に400mほど下った標高1447mの南峰はクマザサやススキ、イバラの矮木帯で大きく展望が開ける。富士山はもちろん北西面の寄生火山群を目の当たりにすることができる。西側には天子山塊が延びていて、その先の駿河湾まで望むことができる。二等三角点の標石が置かれていることからも見晴らしのよいところだということがわかる。夏の宝永山は素晴らしい、が秋冬のハイキングなら大室山がおすすめ。
 
 今回は紅葉黄葉の大室山を訪ね、南峰山頂から周辺の展望を楽しみ、3000年前に活動したという巨大火口を見てみたい。さらに大室山の眼下に広がる秘密の花園、野尻草原を訪ねてみよう。紅葉ハイキングとはいえ、細いトレイルを辿ってピークハントし、寄生火山のあれこれを知るインテリジェントなツアーである。
大室南峰から北西火山群

大室山火口流出口

 東京から富士山の南麓を抜けて富士宮鳴沢線(通称開拓道路)に入る。紅葉黄葉の中をドライブして精進口登山道入口に駐車。ここは富士風穴や青木ヶ原樹海を散策するエコツアーのスタート地点。いつもは駐車に困るくらいなのだが、平日とあって無人。昼を過ぎていて、山登りするにはいかがなものか、という時間ではある。
 
 精進口登山道を行く。溶岩流が作った荒々しい樹海の中を歩いてわずか、富士風穴入口。風穴に寄ってみよう。遊歩道の表面は溶岩の流れが縄文のように残されていて生々しい。風穴は巨大な竪穴になっていて、ヘッドランプをつけた探検家は穴底からさらに横穴にもぐりこんで洞穴の中探索するようになっている。一帯が特別保護地区になっているので勝手に洞穴に入り込むことは禁止されていると看板に書かれている。樹海の中を勝手に歩くのも禁止だ。いつだったか時の短命総理大臣がやってきてファミリーでエコツアーに参加しているのを見たことがある。エコツアーの会社がいくつかあり、総理大臣でなくてもツアーに参加すれば洞穴や樹海のあちこちをガイドとレクチャー付きで見て歩くことができるのでおすすめだ。

 再び精進口登山道に戻り大室山の麓を目ざす。溶岩流の作った魔界のような森を抜けるといきなりブナやモミジの巨木が広がるやすらぎの森に入る。灼熱の溶岩流を免れた大室山一帯は太古のままの明るい広葉樹の森になっている。「山梨100の森」という看板が立てられていて、このあたり通称ブナ広場。太古の森といっても前述のように3000年ほど前にできたもの、西暦864~865年長尾山一帯からの噴出した大溶岩流は大室山の脇をかすめ富士北西麓一帯を埋めつくすのだ。この貞観の噴火と呼ばれる大火山活動は書誌にもあり年月も明らかだという。古代湖が埋め立てられ本栖湖、精進湖、西湖が生まれ、青木ヶ原樹海が出現したのは歴史時代のこと、ついこの間の事件だったのである。
 
野尻草原と片蓋山右と左弓射塚

 秋の日は短い。大室山山頂へと先を急ごう。山頂への登山道はないと言ったが、ブナ広場から中腹へ延びる林道跡があるのでそれを辿るのがよい。大室山の北西麓に寄生するさじき山のコル(峠地形)までブナの巨木の森を登る。峠近くで明瞭な林道が現われ、先で二又となって神座風穴と野尻草原へと続いている。峠からは大室山の北東尾根を辿る。古い仕事道があって物好きなハイカーがはっきりしたトレイルを残しているのでそれを追う。炭焼き窯の跡がところどころにあって、この山が精進や根場村の里山だったことをうかがわせる。ブナの大木がカエデやアセビの潅木に変わり、峠から標高差200mほどで大室山頂。標識が傍らの雑木のくくりつけられているだけ、なので踏み跡を追って南峰にトラバースしよう。クマザサが少々うるさい道を緩く下っていくときれいな疎林が続く尾根となる。右手は深い谷、これは? これが大室山の火口であることはすぐに分かることだ。この辺りかな、というところでクマザサをかき分けると南峰を示す山頂標識と足もとに三角点標石を発見。待望の展望台へは三角点からイバラのブッシュを10mほどかき分けると立つことができる。

 新鮮な景観が待っている。正面に冠雪の富士が大きい。紫の山腹に点在するいくつものコブはそれぞれが名のある寄生火山である。左手から、イガドノ山、弓射塚、長尾山、幸助山、片蓋山などなど。小さな火山たちは紅葉黄葉の装いで美しい。眼下にはこのあと訪問予定の野尻草原がはっきりと見てとれる。ここから草原へまっすぐに下る道はないものかと右往左往してみるがイバラとクマザサに阻まれて侵入のしようがない。
 
 草原に下る前にもうひとつやることを思い出した。大室山の噴火口を見ないで下山することはできない。時間は2時前。秋の日が傾いてきて気が急くが、三角点まで戻り火口へと続くトレイルを追う。きれいなカエデやクヌギの林をわずかに下って火口縁に降りることができた。南縁が溶岩の流れ口でいちばん低い。強い南風が西日といっしょに吹き込んでくる。火口底には雑木が三々五々立っていてて、ふと、動くものが。大きな角を持ったシカだった。シカの楽園に立ち入るのは遠慮して、再び南峰山頂に登り返す。高差100mもない。大室山の火口は大きなもので、直径400mほど、深さ100mくらい。きれいな円形を描いていてここを見ないで大室山を訪問したとは言えないのではないだろうか。火口に辿りつく方法としては今日のルートがおすすめだ。

 野尻草原への近道がないことは分かったので大室山頂まで戻る。山頂から往路を戻ると右手、野尻草原へ続く林道に下る細道を発見。これを辿る。すぐに古い林道跡に出ることができた。ここで再びリッパな角を持った大シカ君と遭遇。ヒトと見るやきびすを返して森の中へ消えていった。歩きやすい林道はふだんシカたちの歩道になっているようだ。
 
 富士山の林道は、かつて造林のための道だったようだ。あちこちにうるさいほど延びている。必要とあれば再びトラックを通すこともできるのだろうが、ハイキング道としては一級だ。林道跡を辿っていくと上井出(富士宮市)に下る本線?と分かれ支線が野尻草原へと大きく廻りこんでいる。栂尾山の麓をまくようにして進むとやがて野尻草原の縁に立つことができる。ここに古いトラックの残骸。いつころのものだろう。昭和も前半、戦前のものかもしれない。いまやこの草原のシンボルになっているようだ。
 
 さきほど大室南峰から見た光景が再び広がる。今度は草原のススキが前景にあって、夕日の富士山と錦しゅうの中段とで絵のようだ。風が冷たくなってきた。草原には研究者の置いた何のためのものか計測装置があちこちにあって、一部からこの草原が注目を浴びていることを物語っている。
 
 今、野尻草原は後退しているとのことで、このまま森に戻すのか、草原を守るのか議論の対象になっているとのこと。野尻草原の出自にはいくつか説があり、かつては溶岩流の流れの様子から、ここに噴火口があり青木ヶ原溶岩流の一部を供給していたのではないか、と言われていたそう。ごく最近のレーザー航空測量の成果としては、この草原は溶岩のたまりだった、とされているようだ。長尾山一帯から流れ出た貞観噴火の溶岩はこの窪みにたまりにたまり溶岩湖を作ったという説だ。溢れ出た溶岩の出口も確認できているという。
 
 大室山の東に大きく広がるこの平はかなり特異な光景だ。南麓の水ヶ塚浅黄塚のあたりにも似たような平がある。それにしても、この平が全部溶岩湖だったのなら、どうして樹海の部分と草原の部分に分かれたのだろう。専門家に聞いてみたいところだ、などとつぶやきながら、草原をすすむといきなり軽水林道に出くわす。この林道は供用中のもので、しかるべき許可があれば車を走らせることができるようだ。すっかり薄暗くなった軽水林道を飛ばす。精進口登山道に出てスタート地点へと下る。ヘッドランプがないと歩けないな、と思うころようやく開拓道路を走る車の音が聞こえてきた。5時半終了。
 
ウエストんの若い写真見つけた。登山家のイメージならこれがいい
「富士山を知る見るハイキングガイド」伊藤フミヒロ著